平成の大築城により、かつての姿へと復元された天守閣/大洲城

江戸時代初期、藤堂高虎と脇坂安治が藩主だった際に、天守などが造営されたと言われる大洲城。1617年(元和3年)には加藤貞泰が城主となり、以降は加藤家六万石の居城として栄えました。ところが1888年(明治21年)、老朽化などを理由に天守が取り壊され、台所櫓と高欄櫓、苧綿櫓、三の丸南隅櫓を残すのみとなってしまいます。やがて市民の間で天守復元の気運が熟成され、2004年に伝統工法を用いて、天守閣は往時の姿へと蘇りました。

全国でも珍しい台所として立てられた櫓

大洲城04下台所

台所櫓はその名の通り、炊事場としての機能を持った珍しい櫓です。戦のために籠城した際にここで調理をすることを想定し、6間×4間(約1,090cm×約730cm)の櫓内部の3分の1は竃などを置くための土間になっています。また煙出し用の格子窓も確認することができます。もともとは江戸時代初期に創建されたと考えられていますが、1857年(安政4年)の大地震により大破したため、その2年後に再建されました。梁や柱などが当時のままに残った貴重な櫓は、国の重要文化財に指定されています。

「北から肱川越し見たときには、破風を設けた堂々とした姿を望むことができます。かつて船で移動していたため、この角度からの意匠にこだわったと考えられています」と大洲城管理事務所の柿見陽介さん。現代であれば、JR四国の観光列車「伊予灘ものがたり」の車窓からその美しさを確認することが可能です。

古の匠たちに敬意を払いながら、現代の匠の技を結集した天守

江戸時代の古絵図、江戸時代につくられたと推測される天守雛形、明治時代に撮影された写真などの史料をもとに行われた天守の復元。富山県の宮大工と地元の大工が連携して行われた木工事、竹小舞を組み、幾重にも壁土を重ねて表面を漆喰で仕上げる左官工事、丸みを帯びた唐破風を忠実に再現した屋根工事など、多くの匠たちの力により大事業をなし得ることができました。長押や垂木には、鍛冶師が純鉄から製作した和釘を用いており、細部にまでこだわったことがうかがえます。

天守の見どころの1つが、1階部分から見上げる吹き抜け。「江戸時代の雛形に習い、上階に床を貼っていないので、真柱を始め素晴らしい木組みを一望することができます。このような情景が見られるのも大洲城の特徴です」と柿見さん。床を貼っていない理由については諸説ありますが、西洋の建築の影響を受けたのではないかとも考えられています。大洲城01

高欄櫓は、大洲城下を一望する特等席

大洲城の建造物のなかで、唯一、2階に縁と高欄のあるのが高欄櫓。ここからは城内を一望することが可能です。また西側と東側には唐破風屋根を施すなど、装飾的な櫓でもあります。台所櫓と同様に安政年間の地震により大破し、1860年(万延元年)に再建され、国の重要文化財に指定されています。ここから眺める情景で、1番のおすすめは夕暮れどき。空と城下が茜色に染まる幻想的な景色は、一幅の絵画のような趣です。

肱川に対面する場所に位置する、貯蔵のための櫓

大洲城05苧綿櫓

二の丸東端に位置する苧綿櫓は、肱川の土手に張り出すかのようにつくられています。1階には袴腰形の石落とし、2階には肱川に向けた出窓があり、主に物資の備蓄、見張りのために使われていたと考えられます。櫓名の「苧綿」とは、布や糸の原料となる繊維のこと。これらを保存するために使われていたと考えられます。
この櫓は1843年(天保14年)に再建され、昭和34年に解体修理された際には、洪水に備えて石垣を2.6m嵩上げしました。国の重要文化財に指定されています。

城を守るために築かれた、大洲城の建造物で最古の櫓

大洲城06三の丸南隅櫓

1766年(明和3年)に建てられた国指定重要文化財の三の丸南隅櫓は、現存する大洲城の建造物のなかでもっとも歴史あるもの。建物の外部両端には袴腰型の石落としを備えています。城の警固のための重要な役割を果たす櫓であったことを物語っています。すぐそばには国登録有形文化財の旧加藤家住宅主屋があり、一帯は「お殿様公園」の愛称で市民に親しまれています。

登城記念には、大洲和紙に墨あとも美しい御白印と武将印を

近年、御城印集めがブームとなっていますが、大洲城の御城印は大州和紙に「大洲城」の文字が手書きされています。また、加藤家の家紋である蛇の目紋と上り藤紋、2つの家紋も記されています。

大洲城08

もう1つ、大洲城では初代藩主加藤貞泰の武将印も販売。こちらも大洲和紙に「加藤左近太夫貞泰」の文字を手書き。表紙に大洲城が描かれた御城印帳も売られているので、記念に購入するのもいいですね。

大洲城07

鳴り響く轟音が迫力満点の火縄銃の演舞

大洲藩鉄砲隊は、2014年に大洲城天守木造復元10周年を記念して結成されました。現在隊員は14名おり、江戸期の貴重な武器であった火縄銃の演舞を披露しています。毎月1回、第3土曜日14時からは、大洲城本丸で公開練習を実施。甲冑を身にまとった鉄砲隊が登場し、法螺貝を吹いて練習開始を知らせます。火縄銃の歴史などを説明したらいよいよ演舞。巻き上がる白煙と響き渡る轟音の迫力が圧倒します。

安全な輪ゴム火縄銃で、火縄銃の迫力を体感!

お子さんも安心して挑戦できるのが、輪ゴム火縄銃体験。内子手しごとの会が手作りした、本物そっくりの輪ゴム火縄銃を使用し、城内に設置した的を狙います。銃は本物と同じ大きさで、輪ゴムとはいえかなりのスピードで飛び出すので、あたかも鉄砲隊員になったかのような気分を味わうことができます。開催はお大洲藩鉄砲隊公開練習と同じ第3土曜日、14時30分から開始です。

大洲城03

360度のパノラマはもちろん、春の桜、夏の花火も必見

本丸広場や天守閣、高欄櫓など、大洲城では城下の絶景を眺めることができます。北側と東側からは遠い山並みと肱川のコントラストが絵画のような美しさ。西側はのどかな田園と町並み、南側は間近に迫る山と町並みが望め、それぞれに風情を競い合っています。
また大洲城には約200本のソメイヨシノが植えられており、3月下旬から4月初旬が見頃。城内から桜越しに見る城下の風景も味わい深いものです。夏の大洲川まつり花火大会では、大洲城をバックにしたナイアガラが幻想的です。

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《施設情報》
■代表者:柿見陽介
■住所:〒795-0012 愛媛県大洲市大洲903
■電話番号:0893-24-1146
■営業時間:9:00〜17:00
■定休日:無休
■観覧料:大人550円、中学生以下220円
■HP:http://www.ozucastle.jp/index.html

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